ばくさん・・・
ひょんなことから、
長い間行方不明になっていた、
ばくさんの詩集が見つかった。
読みはじめで、
思わずにやりとしてしまう。
一二月のある夜
一二月のある夜 金のことで
ホテルのマダムを詩人が訪ねた
マダムはそっぽを向いて言った
お金のことなんて
詩人らしくもないことです
俗人の口にするみたいなことを
詩人がおっしゃるもんじゃないですよ
お金に用のないのが詩人なんで
詩人は貧乏であってこそ
光りを放ち尊敬もされるんです
詩人はそこでかっとなり
借りに来たことも忘れてしまって
また一段と光りを添えていた
思潮社「山之口貘詩集」より
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