ノコギリとバイオリン
瓦屋根は木工大工ではないが、ときたま仕事でノコギリを使う。
頻繁に使うわけでもないので切れが悪くなっても
買い換えずに「ギーコ、ギーコ」とそのまま挽いている。
ところで大変意外なことであり、信じてもらえないかもしれないが、
瓦屋根はバイオリンを持っている。
どうしてバイオリンの話を持ち出したかというと、
ノコギリを挽く音と
瓦屋根がバイオリンを弾く音が
そっくりなのである。
「ギーコ、ギーコ」
瓦屋根が日曜大工で日中「ギーコ、ギーコ」と
ノコギリを挽きまくった日の夜遅くのことである。
瓦屋根が閉じこもった奥の部屋から
またしてもノコギリを挽く音がしてきた。
それがしばらく続いた。
瓦屋根のYOMEさんは、堪忍袋の緒が切れ
「もう! 遅くからいいかげんにしてよ!」
と怒鳴り込むつもりで部屋を開けた。
そこにはバイオリンを手にした瓦屋根の姿があった。